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東京地方裁判所 平成5年(ワ)11034号 判決

原告

上山商事株式会社

右代表者代表取締役

上山勝章

右訴訟代理人弁護士

杉政静夫

被告

河島均

右訴訟代理人弁護士

並木政一

柴垣明彦

主文

一  被告は、原告に対し、金四〇四万六〇六三円及びこれに対する平成五年七月三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その三を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金六〇四万〇六一〇円及びこれに対する平成五年七月三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が被告に対し、賃貸借の連帯保証契約に基づき、未払賃料等五二六万五三三〇円、更新料金一九万円、鍵代金五五〇〇円、原状回復費用五七万九七八〇円(明細は、別紙未払賃料・立替金及び原状回復費用等一覧のとおり)及びこれらに対する民法所定の遅延損害金の支払を求めたという事案である。

一争いのない事実等

1  原告は、川島和雄(以下、川島という)に対し、昭和五七年六月五日、別紙物件目録記載の建物(以下、本件建物という)を次の約定で貸し渡した(以下、本件賃貸借という)。(争いがない)

(1) 期間 昭和五七年五月一五日から二年間

(2) 賃料 月八万六〇〇〇円(毎月二五日翌月分支払い)

(3) 鍵を紛失した場合は鍵代金として五五〇〇円を支払う。

(4) 無催告解除特約 借主が契約条項に違反したときは、貸主は何らの催告なくして、本契約を解除することができる。

(5) 原状回復 借主がその費用で原状回復義務を負う。

2  被告は、原告に対し、同日、川島の原告に対する本件賃貸借に基づく一切の債務について連帯保証した(争いがない)。

3  本件賃貸借は、原告と川島との間で、昭和六三年四月一九日に、期間は同日から昭和六五年四月一九日まで、賃料は月額九万五〇〇〇円(消費税二八五〇円)、更新料は新賃料の一か月分として合意更新された。その後、平成二年四月一九日、平成四年四月一九日にも合意更新されている。(〈書証番号略〉、弁論の全趣旨)

4  川島は昭和六三年一一月分以降の賃料等の支払いを怠ったため、原告は、川島に対し、平成五年四月一六日到達の内容証明郵便をもって、本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。(〈書証番号略〉)

5  川島は平成五年五月一〇日、本件建物から退去した。(弁論の全趣旨)

二原告の主張

1  本件賃貸借に際し、害虫駆料として、借主が一年に二回一二〇〇円を負担するとの約定があった。また、川島は鍵を紛失した。

2  原告は、本件建物の原状回復費用として五七万九七八〇円要した。

三被告の主張

原告と川島との間における本件賃貸借の期間は、昭和五七年五月一五日から昭和五九年五月一四日までの二年間であるので、たとえ右契約の更新があったとしても、連帯保証人の責任は当初の賃貸借契約期間の経過により消滅し、更新後に及ばない。

第三判断

一原告の主張1の事実を認めるに足る証拠はない。

二そこで、被告の主張について検討するに、本件賃貸借の契約書(〈書証番号略〉)に、①「期間満了の場合は両者合議のうえ契約を更新することをうるものとする」、②「本契約更新の際は現金にて八万六〇〇〇円を貸主に支払うものとする」との各記載があることからすれば、本件賃貸借は当然に更新されることが予定されていたもので、被告においても、本件賃貸借が二年で終了することなく、更新されることを承知して連帯保証人になったものと認められる。とすれば、更新後は連帯保証人の責を免れるとの明示のない本件においては、被告は更新後に生じた本件賃貸借に基づく債務についても責任があると解される。もっとも、賃借人の賃料の支払がないまま、保証人に何らの連絡もなしに賃貸借契約が期間二年として二回も合意更新されるとは、社会通念上ありえないことで、被告がかかる場合にも責任を負うとするのは、保証人としての通例の意思に反し、予想外の不利益をおわせるものである。本件においては、昭和六三年一一月以降、賃借人川島の賃料不払が継続していたにもかかわらず、被告に何らの連絡もなく、平成二年四月一九日及び平成四年四月一九日の二回にわたり本件賃貸借契約が合意更新されている(被告本人、弁論の全趣旨)のであるから、平成四年四月一九日以降の本件賃貸借に基づく債務について被告は保証人としての責任は負わないものというべきである。

三以上によれば、原告の請求は、昭和六三年一一月分から平成四年三月分までの未払賃料合計三九五万一〇六三円、平成二年四月の更新料九万五〇〇〇円及びこれらに対する民法所定の遅延損害金の支払を求める限度で理由がある(原状回復費用については平成四年四月一九日以降に生じた債務であるので、被告に責任はない)。

(裁判官内田計一)

別紙物件目録

一 所在 東京都港区南青山七丁目弐六〇番地

家屋番号 弐六〇番

種類 店舗兼共同住宅

構造 鉄筋コンクリート造陸屋根地下壱階地上六階建

床面積 一階及び二階 216.32平方メートル

三階 214.07平方メートル

未払賃料・立替金及び原状回復費用等一覧

(家賃 95,000円  消費税2,850円)

月\年

昭63

平1

2

3

4

5

1月分

96,200

99,050

99,050

99,050

97,850

2月分

95,000

99,050

97,850

97,850

97,850

3月分

95,000

97,850

87,850

97,850

97,850

4月分

97,850

97,850

97,850

97,850

97,850

5月分

97,850

97,850

97,850

97,850

5/10解約

6月分

97,850

97,850

99,050

97,850

(32,617)

7月分

97,850

97,850

97,850

99,050

8月分

97,850

99,050

97,850

97,850

9月分

97,850

97,850

97,850

97,850

10月分

97,850

97,850

97,850

97,850

11月分

48,463

97,850

97,850

97,850

97,850

12月分

95,000

97,850

97,850

97,850

97,850

143,463

1,166,850

1,177,800

1,176,600

1,176,600

424,017

①未納家賃及び害虫駆除費合計              5,265,330

②更新料(平成2年5月分及び平成4年2月分)      (95,000×2)=190,000

③部屋の鍵取替料金                     5,500

④部屋改修代金 小計                    579,780

①+②+③+④=                      6,040,610円

四階及び五階 壱九壱平方メートル

六階 壱参弐平方メートル

地下一階 272.32平方メートル

のうち、四階四〇三号室、30.59平方メートル

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